’92 年式 ローバーミニ スプライト

8台目のミニは、1本のネジからこだわった超ハイクオリティな1台
ミニ歴25年のキャリアを持ち、かつてはレースにも参戦して、セントラルサーキットでトップにも立ったベテランミニ乗り。そんなオーナーがミニライフの総括として造り上げたミニが、このスプライトだ。ボーイズレーサーを思わせるやんちゃなフォルムとスッキリしたフェイスが印象的なMkⅠ仕様だが、そこにはオーナーの長年の経験と楽しみ、そしてそれによって培われたセンスが凝縮されている。ネジ1本にもこだわり、レストア&カスタマイズを施した究極の1台に仕立て上げられているのだ。
25年のベテランが「最後の相棒」として仕立てた究極ミニ
その佇まいには、不思議な空気感が漂う。思い切りカスタムしているわけではないのに、明らかにノーマルのミニが放つそれとは別物の特別感が伝わってくる。それはオーナーがパーツ選びや取り付けにとことんこだわり、さらにクルマ自体の仕上げにも妥協しなかったためではないだろうか。
「ボンレーシング」が手がけたこのミニは、オーナーの新垣昌一さんにとって歴代8台目のミニになるだけに、とにかく徹底したモディファイが施されている。25年に及ぶミニ乗り人生の集大成として、限りなく新車に近いミニを造る決意をした新垣さんが選んだベース車は、’92年式のスプライト。キャブ車ということを大前提に決めていた彼は、インジェクション車をキャブ化するより無駄もなく、スムーズにツインキャブやウェーバーへの換装ができるスプライトの極上の車体を探し出し、ボンレーシングにそのレストア&カスタマイズを託したのだ。
エンジンを降ろし、ボディはドンガラ状態にまでバラして徹底的にレストア。サビにくい年式で、かつ状態のいい個体のボディをベースにとことん仕立て直された。ドアやボンネット、トランクパネルは新品に交換し、ボルト類も再メッキあるいは新品で組み付けられている。
そして、純正カラーのなかでもちょっと派手なアマランスパープルをチョイス。スポーツパックに設定されていた探し出しカラーだけあって、ミニのフォルムを印象的にしてくれる色だ。それに、ワイドかつスポーティなボンレーシングの7Jオーバーフェンダーを組み合わせ、その取り付け位置や車高にもこだわったことで、ご覧のようなスタイリングに仕上がったのである。
エンブレムを省いてボンネットやトランクなどがスムージングされていることも、カスタム感を強調している。クーラーやキャブ、ラジエターなども新品が組み付けられており、エンジンルームの眺めはまるで新車のようだ。エンジンにはSUツインキャブを装備し、オーバーホールと同時に+ 20のオーバーサイズピストンを組み込んでいる。クランクやコンロッドのバランス取りも行なわれ、全域でトルクアップ&スムーズな吹け上がりが実現している。足回りはアイバッハのコイルスプリングを入れ、スパックスのダンパーを組み合わせた。ミニでレースをしていただけあって、このあたりもこだわっている。
インテリアも左右にレカロシートを奢り、アルミのインパネにスミスのメーターを組み込んだ眺めは、かなりの特別感だ。ここまで仕上げるのに2年を要したというが、それも当然だろう。とにかく綺麗なフィニッシュで、内容もひとつ一つがとことん凝っているのだ。
取材時はようやく完成して納車されたばかり、という状態。ガレージ保管で雨の日は乗らないようにして、気を遣っているそうだ。 こんなに綺麗に仕上げているなら、それも納得。新垣さんの愛情ぶりからは、5年経っても10年経っても、この極上コンディションを維持できているんじゃないか、そう思わせてくれるのである。

ボディの光沢感だけでなく、歪みのないパネルの均一さ、それに匹敵するオーバーフェンダーの仕上がりの高さがよく分かる。
左/MkI仕様のフロントマスクはバッヂレス。オースチンクーパーのエンブレムはインパネに装着されている。牽引フックもアクセント。 右/オーバーフェンダーはボンレーシングの7Jヒストリックタイプ。ホイールはスピードスターMkⅡで、タイヤはADVANタイプDだ。
左/ デルタのレーシングドアミラーを装着。丸みのあるフォルムがミニにはよく似合う。MkIグリルと合わせてクロームの質感を強調する。 右/リアビューも基本的にMkI仕様でエンブレムはなし。リアトレイに置き型スピーカーをレイアウトすることで、往年のスタイルを再現しているようだ。

アルミのセンターメーターパネルにスミスの各種メーターをセット。OMPのステアリングを組み合わせたそのインテリアは、実にシャープな印象である。
左/前席シートはRECAROのエルゴメド。レカロ伝統のフォルムで乗員をサポートし、快適さと疲労軽減、腰痛予防にも貢献するものだ。 右/ドアトリムとウインドーガラスも新品に交換。ブラックのトリムにアルミのハンドルセットがパープルのボディをシックに見せる。
左/エンジンは1293ccにボアアップされ、SUツインキャブと組み合わせてトルクが豊かでピックアップが鋭い特性の、街乗りが楽しいチューンが施されている。右/ マフラーはキングスロードのサイド出し。純正ライクなさり気ない雰囲気で、小気味良い走りをサウンドでも楽しめる。
Owner:新垣昌一さん

これまでの集大成として、このミニを作りました!
ミニ歴は25年になる新垣さん。「いままでの集大成として、新車を作るつもりでオーダーしました」。エンジンは始動性も良く、どこを走っても楽しい仕様に仕上がったことで大満足。「ミニはオモチャですわ。宝物、時計みたいなもん」と語るとおり、日頃は別の足グルマに乗り、ミニは天気の良い日にドライブを楽しんでいるそうだ。