【Heritage Museum 】’74 MINI COOPER 1000 MkⅢ

’74 ミニクーパー1000MkIII

ドアウインドーが扱いやすいレギュレータータイプに変更になるなど、クルマとしての完成度の高さを評価する声が多いMkⅢ。そのMkⅢのなかでも当時の正規輸入車となれば、希少な個体である。50年経った現在でもその輝きが色褪せることはない。

希少な正規輸入車が放つ正統派のプレミアム感

 本国メーカーの日本法人(ローバージャパン)によるディーラー展開がされる以前の正規輸入車は、クラシックミニに乗る人にとってはやはり格別だろう。ここで紹介する’74年式のミニ1000MkⅢだが、既に約50年もの前のモデルとなる。そんな個体が状態良く残っていること自体、奇跡的ともいえるだろうが、やはりそこは正規ディーラー車である。テールブルーのボディカラーが印象的な、そんな1台がここに美しく佇んでいる。

 日英自動車の正規ディーラー車としての証は車体や車検証にあるのだが、車体にはエンジンルームの運転席側に車体番号が取り付けられており、正規物であれば車体番号の最後にNの文字が打刻されている。このMkⅢではそれがしっかりと確認でき、並行輸入車であればNの文字は入らず、型式なども不明と表記される場合もあるという。

 また、当時の輸入車は国産車に比べてかなり高価な乗り物であった。ゆえに、それほど売れるものではなくタマ数は少なかった。さらに、’74年の排ガス規制に対応しきれず’80年に日英自動車が輸入を再開するまで新車販売が国内でも途絶えてしまったことを考えれば、いかに貴重な個体であるのかが窺い知れるだろう。

 エンジンはクーパーSの1275ccに載せ替えており、SUの1-1/4 ツインキャブなどで走りの面では刺激的な仕様だ。一方、インテリアや足回りなどはオリジナルを維持。当時の正規ディーラー車が持つプレミアムな雰囲気が存分に保たれているといえるだろう。

 価値あるものを大切に繋いでいく。これもミニライフの真髄のひとつだ。

左/エンジンルームの運転席側にあるのが車体番号や型式などが書かれたプレート。型式部分の最後に「N」が書かれていることが日英自動車たる正規ディーラー車の証だ。右/モダンなルックスとなったMkⅢ。ベース車はスタンダードだが、エンジンはクーパーSに載せ替えてキャブはツイン仕様。その走りは刺激的である。

輸入してから新たに追加されたパーツとして、いすゞ製ガソリンコックが付くというのもこの時代の面白さ。キーもメインキーのほかにいすゞ製のものがある。レザーのガソリンスカートも雰囲気十分だ。

左/ヘッドライトはルーカス、MkⅢグリルはRACのバッヂを装着。テールブルーのボディカラーにオレンジのウインカーがよく映える。右/ホイールは10インチ3.5Jの純正スチールとキャップを装着。タイヤは古典的なヨコハマのG.T.SPRCIALをチョイスした。

左/美しいオリジナルの状態をキープするリア回り。バンパー右側には誇らしげに「日英自動車」のステッカーが付けられている。中/STADIUM製ミラーをAピラーに装着。年代によってはこのミラーのみを装着する場合もあるが、こちらはあくまで補助用として使用している。右/装着するフェンダーミラーは人気が高く入手困難なDESMOのスクエアタイプ。デザイン性もさることながら視認性も高いアイテムだ。

センターメーターやステアリングなどは当時のオリジナルの状態を保つ。エアコンのないオールドミニには扇風機は必需品!?

左/非常に状態のいいレザーシートが美しい車内。岡本さんを含め、歴代オーナーの愛情が注がれてきたことがよく分かるパートだ。右/リアシートのレザーの状態もかなり極上。さりげなく置いてあるブリティッシュデザインのクッションもアクセントになっている。

History

Mk ⅡからMk Ⅲに移行したのが1969年。主だった変更点はドアウインドーがスライド式からレギュレータータイプへと変更となり、走行中の快適性が向上。この頃に一気に世界各国でのミニへの評価が高まり、量産車路線へとシフト。ミニ本来の小気味の良い走りとスタイルが多くのユーザーに受け入れられた。また、Mk Ⅲの構造の特徴を利用しながらフロントマスクを一新した「クラブマン」が発表されたのもこの時代だ。

Owner 岡本博人さん

ミニ歴は37年と筋金入りミニ乗りの岡本さん。最初に乗ったのはMkⅢ、そこからミニ1000、そして現在の日英ディーラー車のMK Ⅲへと辿り着いた。オリジナルのスタイルが好みで、これからもこの状態をキープしていくつもりだという。