’75 イノチェンティ・ミニ 1300
英国ミニとはひと味違った佇まいを見せてくれる、イタリア生まれのイノチェンティ・ミニ。ラテン車らしくお洒落かつレーシーな味付けが施されているのが特徴だ。同車の魅力をより一層感じられる1台をここで紹介しよう。
往年の“ボーイズレーサー”らしさを異端児ミニに宿す
1966年から’76年の間に、BMC(後にBLMC)からライセンスを取得してイタリアで生産されていたイノチェンティ・ミニ。エンジンやトランスミッションといった基本的な部分は本国ミニと共通であるものの、外装はイタリア車特有の独特な色気を纏う異端児的なモデルである。ここで紹介するイノチェンティ・ミニクーパーは’72年にデビュー。ブラックのフロントグリルやロゴの〝Mini Cooper〟の文字フォントなどもラテン風味豊かな雰囲気であり、またドアの三角窓など、随所にマニア心をくすぐる要素を併せ持った魅力的なモデルだ。そんなイノチェンティに乗るのは、以前乗っていたキャブクーパーを含めると足かけ30年ほどのミニ歴を誇る中西さんである。
「小さいけれどやんちゃでよく走る〝ボーイズレーサー〟の雰囲気がとっても好きなんです」と語る。その言葉どおり、載せ替えたエンジンにOERのキャブをセット、バケットシートもオートルックのヴィンテージタイプに換装、さらにホイールは軽快感のあるSSRのフォーミュラメッシュをチョイスするなど、ボディ全体から醸す雰囲気はレーシーそのもの。’60年代にモータースポーツで大活躍をしていたミニクーパーのバックボーンを考えれば、これぞ王道ともいえるスタイルでもある。
ボディにはクラシックミニ特有のサビや腐りが見られるというが、現在は自らの手で板金補修中だと話してくれた中西さん。今後は、オリジナルのヘッドライトやサイドマーカーなどを取り付けて、より完成度の高いイノチェンティへと変貌を遂げたいそうだ。これからも楽しみな1台である。
左/ビス留めのオーバーフェンダーや10インチのSSR製メッシュホイールがレーシーな雰囲気を盛り立てる。今後は純正のサイドマーカーを取り付ける予定だとか。右/定番の砲丸型のフェンダーミラーはベレGタイプを装着。コンペティショナルなシーンでも、よく見かける定番のアイテムだ。
左/ルームミラーは良好な後方視界を確保できるという国産のヴィンテージタイプをチョイス。中西さんは形も気に入っており、湾曲した形状が視認性を向上させるためとにかく見やすいという。右/ブラックアウトされたフロントグリルもイノチェンティの特徴のひとつ。Mini Cooperの文字もひと味違った雰囲気を醸し出している。オリジナルのヘッドライトに今後は変更予定だ。
左/ドアの内張りも美しい状態が保たれている。窓ガラスはスライド式ではなく、レギュレータータイプ。サイドポケットはなくイタリアらしいデザインのドアノブが装着されている。右/ステアリングはイノチェンティ純正のヘレボーレ。6連のメーターも純正のまま。ひとつだけ調子が悪いものがあったので、スミスの油圧タイプに変更している。
左/もともとはレカロのバケットシートを付けていたが、どうもしっくりこないということで、自ら探し出したこのオートルックのヴィンテージタイプへと変更。右/キャブはOERをチョイス。走りを重視したセットアップは、オーナーの中西さんらしさも伺える部分、といえるだろう。
載せ替えられているというエンジンは、程よい使用感だが綺麗な状態が保たれている。
イノチェンティやミニクーパーのエンブレムが印象的なリアビュー。フロントのキャンバー角からもスパルタンな味付けが伺える。
History
1966年から1976年までBMC(後にBLMC)からライセンスを受けて生産していた伊イノチェンティ社のミニ。’72年に登場したクーパーは、998ccと1275ccのモデルをラインナップしていた。エンジンやトランスミッション以外はすべてイタリアで組み上げられており、本国イギリスとはひと味違う佇まいが個性を発揮。1275ccに関しては生産数もそれほど多くないため希少価値が高く、根強いファンが存在することでも知られるモデルである。
Owner 中西 順さん
まだまだカスタム構想の途中段階です、と話してくれたオーナーの中西さん。ボディのサビや腐食が進んでいてあまり良い状態ではないようで、現在は自らの手で板金補修をしている模様。イノチェンティの魅力をさらに引き出すレーシーな仕上がりに向けて奮闘中である。