’80 ミニ 1000E HL
HLの必要最低限なシンプルさが魅力
激動の時代に生産されたともいえるモデルである’80年生まれの1000E HL。必要最低限のシンプルさが魅力のこの車輌の素材の持ち味を生かしつつ、レストアされた極上の一台をここで紹介しよう。
「ミニ乗りのなかでもマニアックな人が選ぶモデルですよね」。
オーナーの重康泰寛さんが照れながらそう語る愛車はミニ1000E HL。1980年に製造されたミニで、英国でも日本でも激動の時代に作られたモデルともいえよう。’75年にBLMCが国有化されブリティッシュ・レイランドに改組。車種の整理が始まっていくなか’77年には「Mk〜」のシリーズ名を廃止。翌’78年には社名がさらにBLカーズに変更。センターメーターが廃止され2連メーターとなったHLが’80年に誕生する。
同時期の日本では’76年の排出ガス規制に伴いミニの正規輸入は一旦ストップ。並行輸入か、’82年の正規輸入再開を待つ形になった。そのためか、ドアのヒンジやカーペットのボタンなどパーツのそこかしこにMkⅢの残り香が感じられつつも、ドアポケット非装備など内装はとてもシンプル。しかし、並行輸入したショップによってパーツが追加され、シンプルながらに豊かな多様性を持つことになった。
重康さんもHLの必要最低限なシンプルさに魅力を感じているそうで、できる限りその部分を残してレストアしているそうだ。ボディカラーはミニの純正色ではなく、トヨタの商用車に使われていた「045」を使用。日本の風景に溶け込みやすいし、タッチアップカラーがすぐに手に入れられるメリットもある。マニアックに、シンプルに。クーパーやクーパーSなどの上級車種とは反対方向の魅力を併せ持つこのミニは、こだわりを持ったオーナーの元でいまもこれからも輝き続ける。
左/反射板付きの戸当りがドア中央のワンポイントに。オーナー曰く「昔のオリジナルだと思います。前オーナーからいただきました。当時物のようなのでそのまま付けています」とのこと。中/純正のスチールホイールだが、キャップに秘密が。ミニ仲間から譲り受けたというウレタン製のナットキャップなので、純正のプラスチックパーツのように割れ・破損の心配がない。右/黒いレザーにベージュとブルーのファブリックが品よく収まる。HL専用シートで新車から装着されていたものだが、40年以上の歳月が流れているとは思えない美品。ドアトリムも当時物だ。
左/普段は外しているが、大きな荷物を運ぶときにはTHULEのルーフキャリアが活躍する。今回撮影したのは岡山国インターナショナルクラシックの会場だったため、タープを載せていたそうだ。中/ヘッドライトはルーカスの、’70〜’80年代っぽさがあるH4フラットを採用。RAC(The Royal Automobile Club=王立自動車クラブ)のバッヂも年代を合わせるため四角いものにしている。右/車体後部にあり、本来はマフラーと左右正反対の位置にあるバックランプだが、オーナーのこだわりで、ワイパックに変更したうえで中央部に移設している。
左/ステアリングはミニバンの純正を流用。HLは2連メーターで知られるが、こちらはセンターメーターを採用した最終型だ。コクピットを全体的にスッキリとさせているのがこだわり。右/1976年から1984年までのミニで採用されていた純正ウインカーレバースイッチをそのまま使用。角ばったデザインが、当時の雰囲気をそのままに伝えてくれる。
History
1976年に日本の排出ガス規制への対応が困難となり、正規輸入が一時中止されたミニ。その後、6年の歳月を経て1982年に日英自動車が正規輸入を再開。以後、国内における第2次ミニブームを牽引したのがこのミニ1000E HLだ(今回紹介するものは1980年製)。1977年以降は、「Mk~」というシリーズ名が廃止されたが、年代的に「MkⅢ」の次世代に当たるため「MkⅣ」と呼ぶ人も。BLカーズ時代に製作されたモデルで、パワーユニットは三元触媒付きの998ccとなる。
Owner 重康泰寛さん
8歳の頃に最初に購入したジェットブラックのミニ1000(左ハンドル)、1992年式のキャブクーパーと乗り継ぎ、現在のミニ1000E HLが3台目という生粋のミニ好きである重康さん。当時の雰囲気を感じられる現在の愛車を大事に乗っていきたいとのことだ。