EVベースにミニは最高の1台 EVコンバートでクラシックミニ需要が再燃する?

オーナーによるEVコンバートの誌面も全文掲載

BMWミニが英国ロングブリッジ工場で始めたクラシックミニのコンバートEVサービス「MINI Recharged」。

 このほどBMWの新たな取り組みとしてクラシックミニをEVにコンバートする事業がスタートした。一体どんなコンセプト、そして魅力があるのだろう。ミニのEV化といえば実はオーナーレベルでもかなり前から行われているカスタム手法でもある。そこでここではBMWの新事業の紹介とすでに日本にあるEVコンバート済みのミニを紹介したい。

 クラシックミニは、そもそもボディサイズがコンパクトでデザインが個性的、しかも実用性は十分にあって、走りも楽しめると、可愛くて万能選手のようなクルマだ。だから半世紀以上もの間、数え切れないほど多くのオーナーに愛されて、乗り継がれてきた。

 しかも駆動方式はFF、つまりパワーユニットはコンパクトにまとまっていて、エンジンルームを小さくタイトにすることができた。そのため1960年代から’70年代にかけて、ミニのパワーユニットを流用したライトウエイトなスポーツカーがいくつも作られたのだ。

 これはサブフレームによってパワーユニットがボディにマウントされるという、当時としては画期的な構造だったことも影響している。サブフレームと合体するボディさえ作れば、ミニのパワーユニットをそのまま利用できたのだ。こうしてクラシックミニは、デザインや走りだけでなく、そのパッケージを構成する要素さえも価値があるクルマ、という評価を受け続けてきたのだ。

 そんなミニを素材として、時代に合った新たなモビリティを生み出そうという気運が高まっている。そのきっかけはBMWミニが自らクラシックミニをベースにEVに作り替えてしまうサービスを始めたことだ。

 元々は現代のミニ、BMWミニにEVを追加設定するためにアイキャッチとしてクラシックミニをEV化したモデルを1台だけ製作して、新しいBMWミニをベースにしたEV、eミニを発売するための話題作りにしようとしたらしい。ところが皮肉にもこのPR作戦は、クラシックミニのもつ優れた素材としての魅力を再確認させる出来事になってしまった。あまりの反響から、BMWミニとしても本気で取り組まなくてはならなくなってしまった、という訳だ。

 現在もBMWミニが生産される英国オックスフォード工場の片隅で、このプロジェクトは実行に移されることになった。その名もMINI Recharged。もう一度クラシックミニに走り出す力を与えるモノとして、相応しすぎるネーミングだ。プロジェクト自体はシンプルなもので、クラシックミニからエンジンや燃料タンク、排気系のパーツを取り外し、代わりにモーターとバッテリー、コントロールユニットを搭載する。そして驚きなのが、取り外したエンジンはキチンと管理されて、然るべきときには元通りのパワーユニットに戻すこともできる、というもの。将来的に合成燃料の普及によってエンジンが再び利用できる日がくるかもしれないからだ。

 残念ながら、このMINI rechargedは英国内だけのサービスで、日本のミニオーナーが利用することはできない。でも諦めるのはまだ早い。日本国内でもクラシックミニをEV化するサービスは、いくつか存在するのだ。ひと昔前はバッテリーの性能も低かったし充電や供給できる電力にも限りがあった。比較的コンバートEVは作りやすかったとはいえ、今日主流のリチウムイオンバッテリーが普及したことで、安全性を確保する必要性が高まっている。そのため以前と比べてEVへコンバートして車検を取得するのはハードルが上がってしまった部分もある。EVコンバートの費用も、現在では500万~600万円はかかるというのが相場のようだ。

 2022年6月発売のクラシックミニマガジンVol.63では、BMWミニのサービスMINI Rechrgedの紹介とともに、12年も前からクラシックミニをEVコンバートした日本のEV愛好家を取材してレポートしている。専門業者に頼らず、自分たちでミニをEV化した猛者も存在するのである。掲載した誌面は、モーターの出力など誤記があったため、ここに修正すみの完全版を掲載するので、本誌と合わせてチェックしてほしい。

 BMWミニの新たな取り組み、そして引けを取らぬファンたちによるEV化へのカスタマイズ。いずれであれ、クラシックミニとともに過ごす新たな魅力であることには違いはないだろう。