From MT女子の英国&ミニ探訪記 vol.02【英国ケント州】木村スズノさん

円熟したカー&カントリーライフ

「クルマがつなぐ人と人」

「MT免許ペーパードライバー娘」の古き良き英国と新旧ミニを訪ねて の巻【2】

 みなさん、こんにちは。前回、わたしの英国カンタベリーまでの旅と滞在初日の様子を初めてシェアさせていただきましたが、それから早くも2週間が経ちました。毎日なにかと忙しく過ごしていたせいか、気づいたら1日が終わっていて、時が経つのが本当に早く感じます。さて今回は、前回に引き続き英国カンタベリーでの日常と、日本ではあまり馴染みのない英国の道路事情についてシェアしたいと思います。

 こちらに来てから、久しぶりに新しい環境、新しい出会いがあり、連日新鮮なことばかりです。コロナが世界中に猛威を繰り広げてからは新しい方々と出会う機会も減ってしまっていたので、留学先の学校で友達を作るのは本当に久しぶりの感覚です。初対面の人と話していると必ず趣味や好きなことの話になりますが、そこでミニの話をすると、年齢や性別を問わず盛り上がることが多くてとても嬉しくなります。わたしがお世話になっているホストファミリーにミニの話をしたときは、「昔、ミニに乗っていたんだよ! すごく素敵なクルマだよね」と、思いがけずわたしのホストファミリーがかつてクラシックミニのオーナーだったことがわかり、それをきっかけにとても話が盛り上がりました。その際に、日本から持っていったクラシックミニマガジンを見せると、ホストファザーが目を輝かせて一生懸命見てくれました。彼らがミニに乗っていたのは10年近く前のことだそうで、「ミニの写真を持っていたら見せて欲しい」とお願いしたところ、「きっとどこかにはあるはずだから、今度探しておくね」とのこと。写真が見つかったら、またその時はみなさんにも彼らのエピソードをシェアできたらいいなと思っています。

 ホストファミリーだけでなく、学校で仲良くなった同い年のイタリア女子にクラシックミニの話をすると、「わたしもミニ大好き! わたしの次のマイカーはミニって決めてるのよ」とここでもまた話が弾みました。20歳の彼女はもう自分のクルマを持っていて、ドライブするのが大好きなのだそう。彼女のクルマももちろんマニュアル車。「オートマ車だとクルマを運転してるっていう気分にならなくて。自分で操作するのが楽しいの!」と、普段からマニュアル車に乗っているわたしの父と全く同じことを言っていて、運転するのが本当に好きなんだなあと思いました。それはさておき、学校でミニの話をしてからというもの、イタリア人の彼女を含め学校で仲良くなった子達が、よく「今日こんなミニを見かけたよ!」と写真付きで連絡をくれたり、道を歩いているとき「スズ、あれ見て!」とミニが横を通るたびに名前を呼ばれるようになりました(笑)。ミニをきっかけに友達やホストファミリーと仲良くなれるとは想像もしていなかったですが、おかげで(?)とても楽しい毎日です。

 さて、わたしの私生活の話はほどほどに、今回は現地の道路で頻繁に目にするラウンドアバウトについてお話ししたいと思います。ラウンドアバウトとは、日本でいう環状交差点のことで、日本では2014年に導入されています。ただ日本においてはまだ歴史も浅く、実際に目にする機会も少ないのですが、英国では小さいものから大規模なものまで、とてもよく遭遇します。基本的に信号がいらないこのラウンドアバウトでは、交通の円滑化だけでなく、英国の素敵な風景を守る景観維持、また整備コストの削減などの様々なメリットがあります。

 しかし、逆にいうと信号による機械的な交通整理に頼らずに自己判断が求められるシステムなので、慣れていないドライバーだと最初は戸惑うかもしれません。特にラウンドアバウトに馴染みがない日本人が英国で運転する際は、安全のためにも運転する前にルールを改めて確認しておく必要があります。例えば、ラウンドアバウトに入る直前に白い点線がありますが、これは「先方が優先というサイン」であって一時停止ではない。そう、優先権のある右側から来る車両がいなければ止まる必要はありません。というか、ここでつい一時停止をしてしまい、後ろから来た車両に追突されるという事故も多いようなので、特に注意すべきルールです。また、出口がわからなくなっても、ラウンドアバウト内では何度でもグルグルと回りながら考える時間があるので、焦って停止して他のクルマの通行を妨げないように注意します。こういった仕組みを知るとラウンドアバウトは、ドライバーのひとり一人が良い運転マナーを心がけているからこそ、上手く機能しているシステムだと言えますね。文字通り、円熟味あふれる光景です。

写真のニューミニの前方にある点線は「一時停止」線ではなく、クロスする車道が優先であることを示すライン。歩行者はもちろん、車両であっても「無駄に交通を妨げない」欧州流の好例だ。

 ラウンドアバウトの例に限らず、街を歩いていると基本的に現地の人たちの運転マナーはとても良いなと感じます。英国では、横断歩道に信号がないことが多いようですが(あってもほとんどが押しボタン式)、信号の代わりに「柱の頭に黄色いランプがついた白黒のポール」があります。これは、ベリーシャビーコンと呼ばれていて、歩行者優先のサインです。ポールの前で人が立っている時は、クルマは必ず止まって歩行者に道を譲ってくれます。実際には、わたしがポールの方に向かって歩道を歩いている時からすでに停車して、こちらが横断歩道を渡るのを待っていてくれるんです。それほど親切なドライバーが多い印象です。さらに信号やベリーシャビーコンがないところでも、ほとんどのクルマが毎回歩行者を優先して止まって、にっこりしながらどうぞとジェスチャーしてくれます。また歩行者も、そんなドライバーの親切に手を挙げて応える人が多いんです。そんなドライバーと歩行者がお互いにアイコンタクトして配慮し合う様子は、とても素敵ですよね。

見た目に目立つデザインながらも、なんとなくユーモラスな印象のベリーシャビーコン(高視認性交通標識)。

 日本のように、基本的に歩行者がしっかりと赤信号で止まって交通ルールが保たれているのも当たり前のようで素晴らしいことですが、英国のように自己責任のもと、お互いが配慮しあって比較的自由なルールで成り立っているのもまた良いですね。円熟した国の、円熟したモータリーゼーション、とてもゆったりしていて豊か気持ちになります。では、今回はこのあたりで失礼します。また次回のレポートをお楽しみに。

古式ゆかしいカンタベリーの街並み。中世らしいお城と運河、そして赤レンガの倉庫群。時節柄、城の上部にはウクライナの国旗がはためいています。