’90年式ミニ・モーク

ひと際目を引くレアなハードトップ仕様
念願のモークはほぼ完成形なるもエンジンを強化して楽しむ
ミニの派生車として一定のファンがこよなく愛するミニ・モーク。しかし、オープンベースのモークにハードトップをかぶせたユニークなモークはそう多くない。かつて、岩城滉一さんが出演していたテレビ番組にこのアーミーグリーンのモークハードトップが登場しており、それもハードトップ人気を盛り上げた。今回のモークはまさにそのカラーリングを纏ったハードトップで、いまとなっては貴重な存在だ。テレビ番組に登場した車輌かどうかはともかく、岩城さんとつながりがあるのも興味深い。

ミニ・モークは、ミニの生産が始まる1959年の半年前にはコードネームが与えられ、その生産が計画されていた。ジープ型のオープンボディは当初からの構想で、イギリス軍にとって使い勝手の良い軍用車になることをBMCは期待していたが、10インチのタイヤホイールでは最低地上高が確保できず、軍の採用はなく納入を断念。しかしながらレジャー向けとして販売された。総販売台数約5万台という数字はシリーズ全体から見れば多くないが、イギリスからオーストラリア、ポルトガル、そしてイタリアと生産地を変えながら’90年代中頃まで、長期に渡って生産された。
このミニ・モークハードトップは、年式から察するにイタリアのバイクメーカー「カジバ」が生産した最後のモークがベースのようで、リアにCAGIVAのステッカーも見える。熊本在住のオーナー、木山さんのモークとの出会いは、20年ほど前に東京でバーテンダーをやっていたころに遡る。そのお店には村上里佳子さんといった芸能人や岩城滉一さんの周辺の方々がよく来ていたとのことで、クルマ好きの人も多かった。実際にモークを持っている人もいて、そのころから木山さんにとってミニ・モークは憧れの一台だったという。やがて地元の熊本に戻ったとき、クルマ仲間の先輩のミニ・モークを直に見てひと目惚れし、自分もモークを手に入れることに。さらにキャブクーパーも購入するなど、ミニ2台を所有する時期もあったという。その後、たまたま憧れのモークハードトップが東京で売りに出ているとの情報を得て、何としても手に入れたくて上京、購入した。
手に入れたモークハードトップは、ほとんど現在の仕様に出来上がっていた。ただ、シフトレバーの位置がモークは前方にあってシフトがしづらい。そこで、リンケージを伸ばしてシフトレバーを手前に寄せる改造を施した。それ以外はほとんど仕上がっていたので、その状態でいろいろイベントに出かけたという。長くそのまま乗っていたが、2年ほど前にエンジン・トランスミッション系をオーバーホールした。これは熊本のミニスペシャルショップ「ブリティッシュミニ」で行なっている。
エンジンはオーバーサイズのピストンを組み込み、1275ccの排気量は1310ccとなった。カムシャフトはオーバーラップ°73が組み込まれている。トランスミッションもクローズドレシオに組み替えている。デファレンシャルは4ピニオンタイプが組み込まれ、ファイナルギヤ比も変更されている。
また、キャブはもともとウェーバーの45DCOEが付いていたほか、排気系も変更されている。冷却系ではラジエターがアルミ製に。足回りはネガティブキャンバーが少し付いている程度。タイヤはアドバン032Rで、サイズは165/70R 10。一方、内装ではステアリングがMOMO、シートベルトは左右にCOBRAの4点が付いている。ロールバーもロールケージと言える6点支持で安全性が高い。メーター類はスピード/タコ/油圧/油温/水温/燃料計、それにバッテリーコンディション(電圧)計と7つあるが、いずれもスミス製に統一されている。現在はサイドドアを外してセミオープンで乗ることが多いという。
いまや超貴重なハードトップ! 綺麗な外観のまま熊本に生息
インテリアはほぼ入手した当時のままだが、シフトレバーはリンケージを伸ばして手前に寄せた。ステアリングはMOMO、7つあるメーター類はすべてスミス製となっている。
左/シートベルトはCOBRAの4点式を左右シートに装備している。中/見た目にも機能的にも重要なロールケージ。6点式の鋼管バーがしっかり取り付けられている。右/ 中央の大きめのメーターがスピードメーターで、その左上が燃料、右上が油圧、左下が水温、右下が油温、右端の大きいのがタコ、右下方に電圧の各メーターが配置されている。
左/スライド式のサイドウインドー。右/リアガラスが上方に開く。後部のCAGIVAのステッカーが目立つ。
左/なんとも特徴的なフロントマスク。オーバーフェンダーが精悍さを増している。ヘッドライトはIPF製だ。中/タイヤはヨコハマADVAN 032Rをチョイス。165/70R10サイズのタイヤを10インチ6Jのアルミホイールに組み合わせている。右/サイドミラーがイタリアのvitalon(i ビタローニ)であるのは、カジバ製モークとしては自然なコンビネーションだ。
先輩のモークにひと目惚れ!

オーナーの木山託臣(きやまたくみ)さん。地元熊本で内装業を自営している40代。もともとクルマ好きで、先輩の所有するモークを見てひと目惚れ。早速モークを手に入れる。もう一台のキャブクーパーと2台を所有していたこともあったが、モーク好きはそこで終わらなかった。たまたま東京でハードトップが売りに出ていることを知るとすぐに上京、ゲットしたのがこのモークハードトップというわけだ。