【Heritage Museum 】’61 BMC AUSTIN MINI VAN

‘61年製 BMC オースチンミニバン

1960年の誕生以来、’80年までスタイルを変えずに生産されてきたミニバン。

フィエスタイエローにレストアされた大場泰洋さんの愛車は、

初期のフラットルーフでありながら、現代の道路事情に合わせた近代化が施されている。

希少フラットルーフのミニバンを

レストモッドで蘇らせた現代仕様

 究極の経済車として生み出されたミニは、ビジネスユースのクルマとしてもすぐに活用された。ミニ誕生の翌年の1960年1月、BMCは商用車のバンをリリース。このミニバンはコンパクトなサイズと使い勝手が重宝され、商店はもとより官公庁、AA(英国自動車協会)やRAC(英国王立自動車クラブ)のロードサービスカーなど、あらゆる業種で愛用された。初期モデルはスタンダードミニと同様の850ccのエンジンを搭載していたが、’68年には1000ccに変わり、スタイルがまったく変わらないまま’80年まで生産され続けた。ミニの多彩なバリエーションのなかでも、ロングセラーモデルだったわけだ。

 ここで紹介する大場泰洋さんの愛車ミニバンは、’61年製の初期型がベース。ルーフにボディ剛性強化のための凹みがなく、ベンチレーションを装備した希少なフラットルーフ車だ。大場さんはフラットルーフのミニバンを探し、5年前にこのMPI(マルチポイントインジェクション)搭載の1300ccエンジンに換装されていた車輌を入手。その後、各部の整備と同時にレストアを施すため、3年前に愛知県小牧市の「セブンカーズ」に愛車を託した。およそ1年かけてレストアされたミニバンは、フィエスタイエローのカラーに再塗装。内装も薄いグリーンのシートとトリムに張り替え、足回りもコイルスプリング式に換装した。

 さらに、リアウインドーが小さく、後方視界が極度に狭いミニバンのウィークポイントを改善すべく、左側のリアウインドーの奥にバックカメラを装着。エンジンもヘッドを換装するなどチューンナップが施されている。ミニ草創期のフラットルーフバンをさらに実用的に楽しむべく、あらゆる近代化が施されている。その手法はレストモッドともいえるものだ。希少な初期モデルの近代化は賛否両論あるかもしれないが、ガレージにしまい続ける「静態保存」より、楽しく乗って走り続ける「動態保存」のほうが建設的だろう。

「今後はボディの強化とエンジンルームをキレイにしたいですね」と話す大場さん。今後もこのミニバンを大切に、かつアクティブに乗りこなしてくれることだろう。

左/ウォッシャータンクはチューダーの当時物の樹脂製を装備。中/フロントラジエターはMPIのみの装備だ。整備性を高めるため、フロントグリルを着脱可能にした(ミニバンとピックアップのグリルはボディと一体)。左/ツインインジェクションことマルチポイントインジェクション(MPI)のエンジンに換装。レストア時にビッグバルブのヘッドに交換し、性能をアップ。

キレイにレストアされたインテリア。「もともとオリジナルのステアリングでしたが、樹脂のハンドルが滑るうえ膝にも当たるのでナルディのレザーに変更しました」と大場さん。

シートとドアトリムはフィエスタイエローのボディに合わせて、薄いグリーン色の素材に張り替え。

パナソニック製のナビを採用。狭い後方視界をフォローするため、バックカメラをリアウインドー内側にセットする。ナビとバックモニターの切り替えはトグルスイッチで行なう。

左/ステアリングコラム脇にはスミスの電圧計と時計を装備。右/タコメーターと燃料計、水温計もスミスだ。

フィエスタイエローにレストアされたミニバンは

走行性能と安全性も向上

グリルは着脱式に変更。ヘッドライトとウインカーはLEDバルブを採用している。

フェンダーミラーはテックスを採用。運転席側には丸型の補助ミラーも装備する。

右/ホイールはクーパーSタイプのアルミ。前後の足回りはコイルスプリングに変更している。左/ルーフのベンチレーターはミニバン初期型の純正装備。

History

1960年の1月、ミニの商用車としてデビューしたバン。ホイールベースを105mm延長して2135mmとし、ラゲッジスペースを確保。これが後にリリースされるピックアップやカントリーマン/トラベラーなど「長モノ」の基礎となるわけだ。小回りのしやすさと利便性で、あらゆる業種で重宝されたミニバンは、同じスタイルのまま’80年まで生産された。

Owner 大場泰洋さん

心臓血管外科のお医者さんでもある大場泰洋さんは、このミニバンが最初のミニ。「初めからフラットルーフを狙ってました」とのこと。忙しい病院勤務のかたわら、休日はこの近代化モディファイ、レストモッドで蘇ったミニバンを走らせて大いに楽しんでいる。