【Heritage Museum 】’63 AUSTIN MINI COUNTRYMAN 850 MkI

’63 オースチンミニ カントリーマン850 MkI

数あるオールドミニのなかで、クーパー&クーパーSと人気を二分するカントリーマン&トラベラー。個性的なウッドフレームはいつの時代もファンの心を強烈にくすぐるが、今回紹介する一台もオーナーが愛情を注いで付き合ってきた極上の1台である。

その佇まいはまさに長年連れ添う〝相棒〟

 ミニの最初の派生モデルであったバンのデビューから5ヵ月ほど経過した1960年9月、そのバンをベースに乗用モデルへと進化させて登場したのが、ここに紹介するオースチンセブン・カントリーマン(’62年にオースチンミニ・カントリーマンへと変更。モーリスブランドからリリースされたモデルはモーリスミニ・トラベラー)だ。動力源などはバンからそのまま受け継がれたが、リアサイドにはスライド開閉式のビッグサイズなウインドーが装備された。そして何よりもこのモデルの個性を全面に打ち出しているのが、洒落たウッドフレームをセッティングしたエクステリアだろう。現代のクルマにはないその魅力的なルックスは、現在でもミニファンからはクーパー/クーパーSと人気を二分するほどの圧倒的な支持を得ている。

 ここで紹介するオーナーである野口さんも「高校生の頃からの憧れだった」と話すように、一度見たらその魅力に取り憑かれてしまうユーザーも多い。乗り出してから早30年だというが、野口さん自身もまだまだ飽きることなどないどころか、どんどんその魅力に引き込まれていっているようだ。イギリスの旧き佳き時代を感じさせる、当時の空気感こそ最大の魅力なのかもしれない。

「今後はコツコツと欠品しているパーツを地道に探して、いい状態を維持していきたい」と話してくれた野口さん。長く付き合えば付き合うほど、その奥深さを感じることができるクラシックミニ・ライフ。これからも気持ちの良いペースで、最高の相棒と長く、そして存分に楽しんでもらいたい。

ボディに穴は空けたくないのでミラーは運転席側の補助タイプのみを装着。カントリーマンの特徴でもあるウッドフレームは、一度剥がしてペーパーをかけ、そしてニスを塗ってと、自らしっかりメンテナンス。痛んで黒ずんでいる部分もあるが、時代相応の“味”が車体の雰囲気を高めている。

左/カントリーマンといえば、この広々としたラゲッジ部分。車輌の雰囲気にマッチしたラグや編み込みのボックスもお洒落。ドアパネル内側もゼッケンなどで装飾されている。右/リアシートを倒せば、現代の生活でも存分に使い勝手のいい空間が広がる。レジャーでも大型の買い物でも余裕でこなせるスペースは頼もしい限りだ。

左/いままではずっと850ccのままで乗っていたというが、現在住んでいる九州には阿蘇などの山や坂が多い。その際の走りでは少々パワー不足を感じていたので、車検のタイミングでカムやキャブをイジりパワーアップさせた。右/以前はワンキャブを装着していたが、SUツインキャブに変更。カム変更と合わせ、以前よりも随分とトルクフルな走りを体感できるという。

左/ウッドフレームとのコーディネートとして、ステアリングはレスレストンのウッドタイプを選択。当時から貴重だったが、探し出して痛んだ部分にペーパーをかけ、ニスを塗るなどメンテナンスを施した。右/シートは純正のままのフレック柄。淡い水色の部分とのツートーンが可愛らしく、野口さん本人もお気に入りの部分だとか。座面は破れることもなくいい状態をキープ。

左/ドアの内側は水色で統一、ボディカラーとのコントラストが非常に美しい。ポケット内にあるドリンクホルダーは野口さんの自作だ。右/英国製の旧いラジオが良い雰囲気を醸す。「先日、ショートして残念ながら聞けなくなってしまったんでいまは飾りです」と笑う。

左/車体の雰囲気ともよくマッチしたリバースランプは、ルーカス製をチョイス。細かなパーツセレクトも手は抜かない。右/リアに装着されている「GB」のプレートは野口さんの自作。こういった小物ひとつ取っても、乗り手のセンスが感じられる。

History

オースチンセブン・カントリーマンとなってデビューした。その後、名称をオースチンミニ・カントリーマンに変更、1967年にはエンジンが998ccにパワーアップ、サルーンと同様にMkⅡモデルへと発展する。1969年に実質的な後継機となるミニ・クラブマンエステートが誕生したことによりカントリーマンが廃止。総生産台数は約10万8000台を数えた人気モデルであり、いまなお多くのファンから支持されている。

Owner 野口照詔さん

最初に乗ったのはミニ1000HLだったとか。いつかはカントリーマンに乗りたいと思って九州のミニショップ巡りをしていたところ、とあるショップで写真を見せてもらう。すると、このカントリーマンにひと目惚れ。「とにかく手がかかる。でもそんなところが憎めなくもあり、可愛いいんです」。