From MT女子の英国&ミニ探訪記 vol.11【英国ケント州】木村スズノさん

英国の街と人とミニ

「MT免許ペーパードライバー娘」の旧き佳き英国と新旧ミニを訪ねて の巻【11】

ケント州にあるカンタベリーは大聖堂のある門前町として中世から発展して来た都市。運河や城などが点在する古い街並みは、なんとも落ち着きある佇まいを醸し出している。

 2月に渡英してから半年、日常やイベントを通していろんな人やクルマに出会い、レポートにしてみなさんにシェアするのはわたし自身とても楽しかったです。前回お伝えしましたが今回はこれまでの英国生活を振り返って、英国での生活、現地で出会った人やクルマにまつわる思い出話をレポートにしたいなと思います。

 まだコートを羽織ったり、使い切りカイロを手に持っていた2月、到着したばかりのその頃から「昔のおとぎ話に出てきそうな、なんてかわいらしくて素敵な街!」と気に入っていたカンタベリー。イギリスの南東部ケント州にある古くからある街ですが、その気持ちはずっと変わらず、半年の間何かとときめく気持ちで街を歩いていました。英国お馴染みのどんより雲に、雨の日が続く天気も多かったのですが、風情あるこの街にいるとそんな天候すらも嫌な気持ちにならないんです。8月までの間、ここで冬・春・夏の季節を過ごして、雨の日やポカポカ天気の日はもちろん、嵐の日や雪の日も経験しましたが、どの瞬間も忘れられない、良い思い出として残っています。

 普段、街を歩いていてミニを見つけるたびに写真を撮っていたのですが、停まっているミニを撮っている時に折良くオーナーが現れて。ニコッと笑って、「私のクルマ可愛いでしょ、もっと撮っていいよ」なんて言ってくれたことがありました。この街と同じように、ここに住む人々も穏やかで感じのいい印象です。素敵な街の雰囲気がここにいる人をこんな風に素敵にするのか、余裕ある素敵な人たちがこうした街の雰囲気を作りあげて行くのか……。そんな疑問を感じることもありました。

 また、ここに住む人たちはみんなクルマを大事に乗るなあ、と感じることも多かったです。大抵、街角に停まっているクルマはどれもきれい。すごく汚れていたり、傷でボロボロ……、なんていうクルマはあまり見かけなかったように思います。そもそも英国ではガーデンニングがポピュラーで、休日には庭のお手入れを楽しむなんていう人が多いのですが、同じようにクルマにも愛情を持ってこまめにお手入れをしているのかなあと感じました。

 街を歩いていると、ミニ以外にも、黄色のVWビートル(探偵アニメのアガサ博士が乗っているモデルですね、笑)や、淡い色合いやレトロフォルムが魅力的な日産フィガロ、ピカピカのクラシックベンツ(3代目SL)など素敵だなあと思うクルマがたくさん! レポートを書いていくうち、わたし自身どんどんクルマの魅力にハマってきた気がします。

 これまで学校で出会った友だちや先生たちと、ミニの話題を通じて話が盛り上がったことが意外にも多かったという話をレポートに書いたことがありましたが、その友だちが(カナダに転居した)いまでも「ミニを見かけて、スズのことを思い出したから…!」とミニの写真付きで連絡をくれることがあって。思いがけずミニ繋がりで、こうして連絡をずっと取り合えているのはとても嬉しい。また、こうした友だちとの繋がりだけでなく、クルマのイベントを通して出会ったたくさんの優しい人たちもずっと良い思い出として記憶に残っています。

 前回までレポートしていたグッドウッドフェスティバルへ行った時、実は鉄道ストライキの影響を考えて、3日前から(!)泊まりがけで会場に向かっていました。3日間とはいえ実は初めてだったひとり旅、ワクワクする気持ちと少しだけ不安な気持ちで出発しました。でも不安な気持ちをすぐに解消してくれたのが、宿泊先で出会ったホストの優しさでした。ストライキを知ったのがイベントの直前だったこともあり、会場近くのホテルはすでにいっぱい。そこでこの時は、Airbnb(エアビーアンドビー)のアプリを使って泊まる場所を予約しました。Airbnbは、余っている個人の部屋や家自体を1日単位から借りられるシステムです。その形態はホストによって様々なのですが、わたしが1日目に利用したのはホームステイのような感じで、ご夫婦が住んでいるお家の余っている一室に泊めさせてもらうというもの。

 着いて早々、「ウェルカム!」と感じの良いご夫婦が暖かく出迎えてくれて。しかも予約には含まれていなかった夕食まで用意してくれました。一緒に食卓を囲みながら、グッドウッドに行くために今回ここに泊まったんだ、と話すと「私たちも毎回グッドウッドに行っているんだよ!」と嬉しそうに話してくれました。ただ、このご夫婦はわたしが今回参加したフェスティバル・オブ・スピードではなく、9月に開かれるクラシックカーがメインのグッドウッド・リバイバルという別のイベントに行くのだそう。そこでクラシックミニの話をすると、ご夫婦ふたりともニコニコ笑顔で「私たちももちろんクラシックミニは大好きだよ」と。クルマ好きかどうかにかかわらず、英国の人にミニの話をして反応が薄かったことは一度もないです(笑)。みんな、嬉しそうに、そしてどこか自慢げに「ミニは最高のクルマだよ!」と話してくれるんです。ご夫婦はわたしと出会ってほんの数時間しか経っていなかったのに、「外国からひとりでここまでくるのは大変だったでしょう」と自分たちの娘のように暖かく受け入れてくれます。次の日、朝早く出るわたしに合わせて、温かいイングリッシュブレックファーストを作ってくれたり。

 それから、フェスティバル会場のキッチンカーフードは高いしあまり美味しくないから……と、手作りのバナナケーキにフルーツやスナックなんかも持たせてくれて、本当に良くもてなしてくれて。この時のように思いもしない素敵な出来事って、ずっと忘れないですよね。また機会があれば、もう一度ご夫婦に会いに行って、なにかしらかお礼というかお返しができたらなあ、なんて考えたりします。

 現地で出会った親切な人たちとのささやかな思い出は、英国での半年間の生活をより素敵な記憶として残してくれています。かわいい街に親切な人々やきれいなクルマ、そして人気あるクラシックミニ。本当にこの場所に来てよかったなあと心から思います。みなさんもわたしのレポートを通じて現地の空気感を一緒に味わってもらえていたら嬉しいな、と思います。

 さて、今回で英国でのわたしのレポートは最後になります。わたし自身名残惜しい気持ちがありますが……。これまで読んでいただきありがとうございました。

 ……と言いつつ実は次回以降、今度は現在短期で滞在しているカナダでのクルマ事情について、またレポートにしてみなさんとシェアしていきたいなあと思っています。同じ英語圏でも生まれ故郷とカナダではミニの受け止められ方にどんな違いがあるのか、わたしも楽しみにしています。みなさんもぜひ楽しみにしてください! ではまた。